第3回の調査はパリ東部のフォーブール・サンタントアーヌ地区を中心に実施しました。この地区はバスティーユ広場からナシヨン広場にかけて広がるエリアで、1198年同地に建てられた修道院に起源します。修道院に属する特権の与えられた職人の住む町として発展しました。
調査を実施した空間は、パサージュpassageまたはクールcourの名前が付いているものが多くありました。パサージュはフランス語で通路・通り道・抜け道・横町の意味であり、クールは中庭の意味があります。1本の路地空間からなる単純な事例、複数の建物を介して中庭空間が連続する複合的な事例が見られました。
直訳すると「ロム氏の道」となるPassage Lhommeは、1本の通りで形成され南東端にやや広がりのある小広場があります。通りに面する1階は、商店風の構えが多く植栽で飾られてましたがその多くは営業していませんでした。上階4層は住宅と思われます。調査時は土曜日の昼頃でしたが、人気も無く静かな空間でした。
Cour Viguèsはこの街区南側の通りから入る小さな中庭空間で一部が駐車スペースとなっています。このエリアの他の2つの中庭Cour Saint JosephやCour Jacques Viguèsに比べると小規模でした。建物の下階アーケードを潜りCour Saint JosephさらにCour Jacques Viguèsとつながります。Cour Jacques Viguèsは建物同士をつなぐ空中歩廊が特徴的です。この街区には3つの中庭空間が連携していることになります。
パリにおいては街区内の空間の積極的利用事例として、Village Saint Paulにおいても調査を実施しました。パリには歴史的にいくつもの城壁が存在しましたが、2番目に古いのは12〜13世紀にかけて築かれたフィリップ・オーギュスト王の周壁です。Village Saint Paulはパリで現存する周壁の最大のもののすぐそばにあります。1979年に集合住宅の中庭空間を改修した施設で、約80軒の商業施設が入ります。パリのアンティーク街としてガイドブックにも紹介されている場所です。複数の中庭空間が建物の1階を抜けるトンネル状の通路でつながる空間構成です。調査時は日曜日の昼頃であり観光客の姿も見られましたが、全体的には静かな空間でした。