ヨーロッパ2014調査

05【ヴェネツィア】水路に囲まれた街区の内側の通路や中庭空間

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Written by showa_kanri

ヴェネツィアは潟を埋め立てて築かれた島であるため、新たに土地を増やすことが難しく、建て替えや増築に頼るしかなく、浅瀬を埋め立てて歩道や運河沿いの道を増やしていきました。そのため運河や水路は次第に狭くなっていき現在のような都市の形態となりました。

ヴェネツィアでの調査は2012年に引き続き2回目となります。今回調査を行ったのはリアルト橋とサンマルコ広場およびグランカナルに囲まれたエリアです。観光客が通るメインの通りには多くのブティックやみやげ物を売る店が建ち並び、連日多くの観光客で賑わっています。しかしそこから一歩脇道に入るとヴェネツィアに住んでいる人たちの居住空間が広がっています。建築物の多くは隣家と壁を共有する連続住宅の形式です。そのため水路に囲まれた街区の内側に共有空間の通路や中庭空間を設け、そこから各住戸にアプローチする形式がとられる場合が多く見られます。今回の調査ではこうした通路や中庭空間を調査対象としました。

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Sotoportego e Corte del Banchetto (他複数の名称あり)が位置するのは、サンマルコ広場の北側です。3つの小広場が細い路地でつながる空間です。小広場は店の裏庭になっていて従業員が休憩をとっていたり、住民同士が立ち話をしていたり、観光客の抜け道として利用されていたりしました。また小広場にレストランが増築されていたものもありました。

直訳すると「古いかまどの中庭」という意味になるCorte del Forno Vecchioは、住宅に囲まれた静かな中庭空間です。ソト・ポルテゴ(建物の下を通り抜ける道、学苑885号参照)を抜けると中庭空間に出ます。中央には井戸がありますが、現在では井戸としては利用されておらず、色鮮やかな草花が植えられていました。周囲の建物の窓や入口部分にも手入れされた植物が飾られていました。

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showa_kanri

本サイトに掲載している情報は、調査実施時のものです。現状では異なる場合があります。また当サイトでは現地での対象空間の見学等を保証するものではありません。見学等の場合には、現地での情報に従ってください。

謝辞
本研究はJSPS科研費24500929の助成を受けたものです。

参考
金子友美・芦川 智・菅井さゆり,都市街区における路地空間の利用と空間的効果に関する研究 第1回・第2回ヨーロッパ都市街区内路地空間調査報告,昭和女子大学學苑 885号,2014

金子友美・芦川 智・菅井さゆり・若林晴美,都市街区における路地空間の利用と空間的効果に関する研究(その2) 第3回・第4回ヨーロッパ都市街区内路地空間調査報告,昭和女子大学學苑 897号,2015
 
註釈
1)パリ市公式サイト, http://www.paris.fr/(2014/04/07)
2)パノラマ 近代の見世物のひとつで、遠景や動いている風景を表現する仕組みである。カンバスの両端にシリンダを設け巻き取ることで風景を移動させる仕組みや、円形あるいは多角形の建物の内部壁面を使い、その前に人形などを置いて展観させる仕組みがある。
3)ガッレリア galleria(伊) 屋根のある商店街や歩行者道路。
4)ドゥオーモ duomo(伊) 町の一番重要な教会、通常は司教座教会堂のことである。
5)パッサジオ passaggio(伊) 通路、道
6)ソト・ポルテゴ sotoportego(伊) 建物の下を通り抜ける道
7)ホフ hof(独)複数形はヘーフェ höfe 中庭、裏庭、構内(建物に付属して壁・塀などにかこまれた広場)