ヨーロッパ2013調査

07【ウィーン】通り抜けできる中庭空間

1_P9175360
Written by showa_kanri

ウィーンはオーストリア共和国の首都であり、ハプスブルク家オーストリア帝国の首都として繁栄した歴史をもちます。その歴史を反映して、旧市街には歴史的建築物や宮殿の建物が多く残っています。
そうした古い建築物には中庭が設けられていて、通り抜けができるような仕組みになっているものがあります。中庭に面してパウラッチェと呼ばれる回廊が付いているものもあります。ウィーンではリンクと呼ばれる旧市街を囲む環状道路の内側と外側で、中庭および通り抜け空間について、22事例調査しました。

wine

リンクの外側に位置するアードラーホフは、階段状に並ぶ5つの中庭を10の階段が結びつけて、高低差のある空間となっています。建物は集合住宅であり、入口の表札から約180戸が入居しているものと推測されました。中庭にはところどころ植栽やプランターボックスが置かれていましたが、店舗などの施設はなく、静かな集合住宅の中庭でした。このアードラーホフは1874年に建てられました。

旧市街の中央にはウィーンのシンボルであるシュテファン大寺院があります。その南東に位置するブルートガッセ界隈は旧市街で最も古い部分です。ブルートガッセ3番地から入る中庭には、17世紀に作られたパウラッチェンハウスがあります。白い壁から張り出した黒いパウラッチェ(中庭に面した回廊)とその手すりに施された植物の緑が空間を特徴づけています。この中庭からさらに複合的に大小5つの中庭が連結し、周囲の道路には6つの出入口でつながっている空間です。

About the author

showa_kanri

本サイトに掲載している情報は、調査実施時のものです。現状では異なる場合があります。また当サイトでは現地での対象空間の見学等を保証するものではありません。見学等の場合には、現地での情報に従ってください。

謝辞
本研究はJSPS科研費24500929の助成を受けたものです。

参考
金子友美・芦川 智・菅井さゆり,都市街区における路地空間の利用と空間的効果に関する研究 第1回・第2回ヨーロッパ都市街区内路地空間調査報告,昭和女子大学學苑 885号,2014

金子友美・芦川 智・菅井さゆり・若林晴美,都市街区における路地空間の利用と空間的効果に関する研究(その2) 第3回・第4回ヨーロッパ都市街区内路地空間調査報告,昭和女子大学學苑 897号,2015
 
註釈
1)パリ市公式サイト, http://www.paris.fr/(2014/04/07)
2)パノラマ 近代の見世物のひとつで、遠景や動いている風景を表現する仕組みである。カンバスの両端にシリンダを設け巻き取ることで風景を移動させる仕組みや、円形あるいは多角形の建物の内部壁面を使い、その前に人形などを置いて展観させる仕組みがある。
3)ガッレリア galleria(伊) 屋根のある商店街や歩行者道路。
4)ドゥオーモ duomo(伊) 町の一番重要な教会、通常は司教座教会堂のことである。
5)パッサジオ passaggio(伊) 通路、道
6)ソト・ポルテゴ sotoportego(伊) 建物の下を通り抜ける道
7)ホフ hof(独)複数形はヘーフェ höfe 中庭、裏庭、構内(建物に付属して壁・塀などにかこまれた広場)